ライツで育てるかぐや姫―後編―



思いっきりパラレルなので、苦手な方は見ない方がよろしいかと思います;
付いてこられる方だけどうぞ。かぐや姫妄想、後編。



























わずか三ヶ月で守護スターライツと同じくらいの年頃へと成長したかぐやに、火球達は驚きを隠せないでいました。

それに、成長したかぐやはなぜか夜になると、ぼんやりと空を見上げ、話し掛けても上の空なことが多くなりました。

しかし姿こそ成長したものの、中身に変化はなかったので(笑)

火球達は戸惑いつつも、かぐやといつも通り接っしようとするのでした。





成長したかぐやの噂はキンモク星の民にも伝わり、いつからか求婚者が現れ始めました。

かぐやは誰にも等しく、優しい笑顔で迎えましたが、求婚には一度も首を縦には振りませんでした。

そんなことがある度に、星野はなぜか複雑な気持ちになるのでした。





とある日、星野は意を決して、いつか求婚を受けるのか、と二人きりの時にかぐやに問いました。

かぐやは突然の質問に目をぱちくりさせた後に笑って、しないよ、と言いました。

星野は内心ホッとしつつも、好きな人でもいんの? と茶化すように探りをいれました。

すると、わかんない、とかぐやは一言話して、またいつものように空を見上げ始めました。

横顔のかぐやが、なんだか空と一緒に溶けて消え入りそうで、

星野は思わず近づいて自分の方へ向かせました。

向かせたのはいいものの、お互いにこんなに近くで見つめ合ったのは初めてでした。

かぐやの頬が赤くなり、我に返った星野もそれに気付いてすぐに離れましたが、

どことなく気まずくなり、二人の間に沈黙が流れました。

この時から、かぐやと星野は互いを意識し始めたのでした。





星野のかぐやへの思いの変化は、周りにはバレバレでしたが星野自身は気付いていませんでした(笑)

大気はそんな星野に呆れながらも、時間を見つけてはかぐやについて調べていました。

しかし、書庫を漁っても何も成果は得られませんでした。

森での光と言い、額のマークといい、成長の早さといい、

かぐやはキンモク星人とはまるで違う、不思議な少女ということしかわからないのでした。





ある日かぐやは人目を忍び、近くの森へと一人散歩に出かけました。

最近は夜でも誰彼から声を掛けられる事が多く、落ち着くことができなかったからでした。

少しして森に着き、座って空を見上げようとしたその時、後ろから猫の鳴き声がしました。

振り向くと、額に同じマークを宿した黒猫が、かぐやを見つめていました。

目が合うと短く、みゃーお、と鳴いて、かぐやの足下まで近寄りました。

かぐやは不思議そうに見つめると、黒猫の額のマークが光り出し、かぐやの額に向かって照りました。

その優しい光にかぐやはそっと目をつむると、何かの映像が流れ込んできました。

見覚えのあるお城、景色、そして人が、かぐやの頭の中を駆けめぐっていきました。

そして最後に流れた映像に、かぐやの目から涙がこぼれ落ちました。

光が消えて、映像が終わっても、かぐやの涙は止まりませんでした。

黒猫はそんなかぐやを見て、かぐやの腕へ飛び込み、頬にすり寄りました。

そっと黒猫を抱いたかぐやは、ルナ、と呼びました。

みゃーお、と優しい声でルナは鳴き返したのでした。





その頃、城内ではかぐやが行方不明だと騒ぎになっていました(特に星野が笑)

火球と守護スターライツはかぐやを探していると、かぐやとその他にもう一つの星の輝きを感じて、

気配がした近くの森へと急ぎました。すると、かぐやの他にもう一人女性の姿が見えました。

人が来たのに気付いて顔を上げた女性からは、かぐやにどこか似た輝きを火球達は感じました。

目を閉じているかぐやに星野は、無事なのかを聞くと、

泣き疲れて眠っているだけよ、と女性は答えました。

火球は女性の額のマークがかぐやと同じことに気付き、よろしければ事情を聞かせて下さいと申し出ました。

女性は火球に向き直ると、かぐやを保護してくれたことにお礼を言って、

全てを話します、と額のマークから淡い光を放ち、映像を映し出しました。

ルナ、と女性は名乗り、かぐやに視線を落として、静かに話し始めました。





元々かぐやは、キンモク星からとても遠い所にある月という星に住んでいました。

月にはクイーンが治めていた王国があり、プリンセスと共に隣接した地球という星を見守っていました。

そのプリンセス・セレニティが、かぐやの本来の名前でした。

セレニティは好奇心旺盛で、地球に憧れては度々降り立っていました。

そして幾度目か、セレニティはそこで恋を見つけたのでした。





相手は地球国王子、エンディミオンでした。二人は出会ってすぐ恋に落ちました。

しかし、月と地球の民では許されない恋。二人は引き離され、会うことを禁じられました。

また、二人の逢瀬によって地球では憶測が憶測を呼び、

ついには月が侵略を企んでいると決めつけられ、地球と月間で戦争が起きてしまいました。

エンディミオンは地球の民を止めようと最後まで説得を試みたものの、

暴走した民を止めることは出来ず、セレニティへの攻撃を庇い、エンディミオンは倒れました。

それを見たセレニティはショックで自ら命を絶とうとしましたが、側近であるルナによって止められました。

戦争はクイーンの力によって鎮められ、誤解を取り除いた地球の民達を百年の眠りにつかせました。

倒れたエンディミオンを見て泣きじゃくるセレニティに、クイーンはこう言いました。

『地球国王子の命は助けましょう、ただしあなたは彼と同じ時を生きてはなりません…それがあなたへの罰です』

セレニティは光に包まれると意識を失い、それと同時に体がどんどん小さくなり、

ついには赤ん坊になってしまいました。クイーンは赤ん坊のセレニティを一度抱きしめた後ルナに、

月よりも地球よりも遠い、できるだけ平和な異星へとセレニティを降ろしてきなさいと命じました。

ルナは育ちきるまでセレニティを見守り、時が来たらまた月へと連れ帰ることが役割でした。

セレニティを抱きながら流星群にまぎれ、ルナは月から遠く離れたキンモク星へと流れ着きました。





一通り話し終えたルナに星野は、酷いと思わないのか、と激昂しましたが

ルナは悪くないよ、と眠りから覚めたかぐやの声に遮られました。

かぐやは身を起こして火球達に向き直り、育ててくれたことのお礼と謝罪を述べました。

そして今日中にはキンモク星を発ち、月に帰らなければならないこと、

再びキンモク星に訪れることもできないことを告げました。

大気と夜天は、今までとは別人のように毅然とした態度でそう告げるかぐやに言葉も出ず、ただ見つめるばかりでしたが、

火球と星野には、かぐやの手に力が入っていることに気付いて

星野はいてもたってもいられずかぐやの腕を掴み、森の奥へと走り出しました。

制止の声を上げた大気と夜天を火球は止めて、少しだけあの二人に時間を下さいますか、とルナに言いました。

ルナは星野の行動に驚くこともなく、二人が去った方向を見つめて頷き、そのまま黙り込むのでした。

その頃、星野とかぐやは森の奥にある、二人が最初に仲良くなれたあの小さな洞くつにいました。

だいぶ走って疲れたせいか、かぐやはその場にへたりこむと、星野はその隣りに座りました。

息を切らしながらも、洞くつでの出来事を思い出したのか、かぐやは顔を上げて

この場所、こんなに小さかったっけ、と微かに笑いました。

お前がでかくなったんだって、そう言っていつものようにかぐやのおだんご頭をポンっと優しく撫でると、

かぐやの目からは堰を切ったように、ポロポロとめどなく涙が溢れてきました。

それを見た星野は咄嗟にかぐやの肩を抱き寄せて、ずっとここにいろよ、と言いました。

星野はこの時初めて、かぐやへのの気持ちをハッキリと自覚したのでした。

また、かぐやにとっても星野は特別で、かけがえのない存在であることを思い知った瞬間でした。

それでも、かぐやは下を向き、静かに首を横に振りました。

セレニティの記憶が戻った以上、自らの過去の責任と使命がそれを許してはくれないこと、

また、エンディミオンとの思い出を取り戻した今、

かぐやの心にはセレニティの悲しみと苦しみ、そして彼への愛が再び宿り、はち切れそうな程でした。

察した星野は、かぐやが気を遣わないように、そっか、と笑いました。

とても悲しい笑顔で、かぐやの胸は痛みましたが何も言えず、ただただ謝ることしか出来ませんでした。

かぐや、と名前を呼ばれ顔を上げると、頬に温かい感触がしました。そのぬくもりに余計に涙がこぼれました。

しょっぱいな、と笑いながらもすぐ真剣な眼差しで、忘れないから、と星野はかぐやに言いました。

声が震えるせいか何も喋れず、かぐやは代わりにコクコクと子供のように、何度も頷き返すのでした。




ようやく二人が戻るとルナは、時間よプリンセス、と言って、

その言葉が合図となり、ルナは額のマークから光を発して、かぐやを照らしました。

かぐやは火球、大気、夜天に別れの挨拶をして、最後に星野に向かって、同じように頬へキスをしました。

あたしも忘れない…ありがと、と微笑んで囁くとすぐに光に包まれ、そのまま宙に浮かび上がりました。

星野は、光のヴェールでどんどん薄くなっていくかぐやをジッと見つめていました。

完全に消えるまでは笑顔でいようと心に決めながら、かぐやも星野を見つめていました。

だけど、涙腺は言う事を聞いてくれず、涙が一筋流れてしまったかぐやを見た星野は、

思わず手を伸ばし引き留めようとしましたが、瞬く間に目の前から消え、掴めたのは光の欠片でした。

光の欠片はかぐや達が消えた後も輝きを放つと、いつしかキンモク星全体に降り注ぎました。

優しい光に包まれると、周りの金木犀が一斉に咲き乱れました。

それはそれは美しい光景で、火球達はみとれました。この光はかぐやの力でした。

しかし星野だけは舞い散る花びらの中、光が消えた後も拳を握りしめたまま、空を見て立ちつくし続けるのでした。






―おしまいと見せかけておまけ(笑) ここまで読んで下さり本当に有り難う御座いました(ペコリ)―





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